金属溶射

 高架道路構造物の維持管理にかかるLCC(ライフサイクルコスト)の最小化を目指して、予想される劣化に対して予防保全対策を行い、老朽化した橋梁の補修と長寿命化を進めています。鋼橋における損傷の60%は桁端部での腐食損傷であり、伸縮装置、桁端部、支承への防食対策が緊急の課題であると考えています。
 そこで、私達はこうした腐食環境下でも十分な耐食性能を発揮する工法として、従来の塗装や溶融亜鉛めっきとは異なる、Al-(5%)Mg合金による“プラズマアーク溶射(TAPS:Transfer Arc Plasma Spraying)”を提案しています。

金属溶射の特徴


高い防食性
 Al-(5%)Mgプラズマアーク金属溶射の耐用年数は、100年以上という目標を設定しています。皮膜の耐久性能を評価する手法のひとつである中性塩水噴霧サイクル試験結果から、金属溶射の皮膜は6000時間(100年以上)の耐久性能が確認されています。
良好な施工性
 従来の溶射機では、30~50cm程度の溶射距離が必要でしたが、新開発のプラズマアーク溶射機は、狭隘な桁端部等での施工を可能にするため、従来機に比べて小型・軽量化を図り、10cm程度の溶射距離で施工することが可能となりました。
 さらに、通常は窒素ガス(ボンベ設備)を使用していましたが、現場作業の効率化と施工性を考慮し、空気中にある窒素(体積で約80%)を電離状態にして溶射材料の酸化を抑えるシステムを構築し、システム全体をコンパクト化しました。
母材への熱影響が少ない
 プラズマアーク溶射は最も高品質な溶射法の一つで、気体分子が陽イオンと電子に電離した超高熱状態(6,000℃以上)の熱エネルギーを利用して溶射材料を溶融させ、母材に高速で衝突させる技術です。
 また、母材での温度上昇は約20~30℃(対象物によって異なります)と小さく、溶融亜鉛めっきのように過大な熱応力が生じないことも大きな特長です。
周辺環境に配慮したブラスト工法
 金属溶射では、ブラストによって鋼材素地面を調整する必要があります。通常のブラストは乾式の直圧式ブラスト装置を使用するため、粉塵と騒音が発生し、作業環境が過酷で周辺への環境負荷が避けられません。
 そこで、作業環境の改善と騒音低減を目的とした湿式のブラスト工法を開発しました。さらに、ブラスト処理後の発錆を抑制する工法についても研究・開発を行っています。

※素地調整の際、狭隘で薄暗い現場環境の被対象物を広範囲に短時間で表面粗さと除錆度を評価するのに、弊社開発のTAPS Testerが便利です。

金属溶射を用いた防食技術


鋼桁端部溶射 (特許 第5512501号、特許 第5490674号)
 鋼桁端部は、主桁・横桁および支承と橋台立ち上がりコンクリートや耐震補強部材、落橋防止装置等の付属物に囲まれた狭隘部であり、最小遊間は10cm程度しかありません。
 従来、狭隘部での施工は、重防食塗装との併用を行ってきましたが、皮膜の耐用年数の違いを考慮すると、重防食塗装との併用をなくし、すべてを金属溶射(100%)施工ができるように取り組んでいます。
溶射ボルト (特許 第5404183号)
 鉄道や主要幹線等の交差部に位置する橋梁において従来は、添接部の防錆・防食対策が重防食塗装または溶融亜鉛めっき高力ボルトの採用しか考えられないため、金属溶射の採用を見送られたケースもありました。
 供用後の維持管理(メンテナンス)の重要性ならびにライフサイクルコストの観点から主構造に金属溶射の採用が望まれ、主構造部材の耐用年数と同程度の耐用年数が期待できる溶射高力ボルトを開発しました。本体主構造と同仕様の金属溶射を施すことで、溶融亜鉛めっき高力ボルトを採用する時の異種金属腐食の懸念を払拭することができました。さらに、溶射高力ボルトは母材への熱影響が小さいため、F10Tとしての設計軸力の導入が可能となっています。
溶射伸縮装置(溶射ジョイント) (アスキッド:特許 第5300314号、商標 第5478814号)
 橋梁の多径間連続化に伴い、鋼製伸縮装置の大型化が進み、雨天走行中の車両(特に二輪車)のスリップ対策として、フェイスプレートの滑り止めが重要になってきました。また、橋梁の主な劣化原因は、伸縮装置からの雨水の浸入であることが知られています。
 私達は防食を考慮した伸縮装置への溶射工法を開発し、滑らず、錆びず、耐久性に優れた伸縮装置を提供しています。